糖尿病の種類
このページでは、糖尿病の種類について解説致します。
・糖尿病について色々なことをお知りになりたい方は、「糖尿病について」のページをご覧下さい。
・当院での糖尿病診療に対する考え方については「糖尿病診療」のページをご覧下さい。
「糖尿病」と聞くと、甘いものの食べ過ぎや肥満といった、生活習慣が原因の病気というイメージが強いかもしれません。しかし、その常識が、実は糖尿病の一面に過ぎないことをご存知でしょうか。日本の糖尿病患者の9割以上は確かに生活習慣がある程度関わる「2型」ですが、その2型の方も遺伝的な要因があったり、他の糖尿病に関しては全く異なる原因で発症したりしているのです。
例えば、免疫システムの異常によって突然発症する「1型糖尿病」、妊娠をきっかけに起こる「妊娠糖尿病」、さらには他の病気や薬が原因となる糖尿病も存在します。これらは原因が違うため、治療法も全く異なります。この記事では、4つの主要な糖尿病のタイプについて、その特徴と違いを詳しく解説します。
糖尿病にはどのような種類がある?4つの主な分類と概要
糖尿病は一つの病気ではなく、原因や体の状態によって、大きく4つのタイプに分けられます。
| 分類 | 主な原因や特徴 |
|---|---|
| 1型糖尿病 | 免疫システムの異常で、インスリンを作る細胞が壊される。 |
| 2型糖尿病 | 遺伝的な要因に、生活習慣の乱れが加わり発症する。 |
| 妊娠糖尿病 | 妊娠によるホルモンの変化がきっかけで起こる。 |
| 二次性(その他) | 他の病気や、治療で使う薬の副作用が原因となる。 |
これらのタイプは、原因が全く異なるため、治療法もそれぞれ違います。
自分や家族の健康を考える上で、まずは糖尿病にはどんな種類があるのかを知ることが、とても大切です。
ここでは、4つの主要な分類について、それぞれの特徴をざっくり見ていきましょう。
1型糖尿病:インスリンが作られない状態
1型糖尿病は、生活習慣とは関係なく、主に「自己免疫」という体の仕組みの異常によって起こります。 私たちの体には、外部から侵入したウイルスなどを攻撃して体を守る「免疫」というシステムがあります。 しかし、この免疫システムが何らかの理由で誤作動を起こし、自分自身の膵臓(すいぞう)にあるβ細胞を攻撃して破壊してしまうのです。
β細胞は、血糖値を下げる唯一のホルモンである「インスリン」を作る工場のような場所です。 この工場が破壊されるため、インスリンがほとんど、あるいは全く作られなくなってしまいます。 そのため、治療では体の外からインスリンを補う「インスリン注射」が不可欠となります。
このタイプは、子どもや10代、20代の若い世代で突然発症することが多いのが特徴です。 もちろん、大人になってから発症することもあります。 発症すると、急激に次のような症状が現れることが多いです。
- 異常な喉の渇きと多飲 血液中の糖が増えすぎると、血液がドロドロになります。体はそれを薄めようと、水分を強く求めるようになります。
- 多尿(頻尿・尿量の増加) 増えた血液中の糖は、尿として体の外に排出されます。その際に多くの水分も一緒に排出されるため、トイレが近くなります。
- 体重の急な減少 インスリンが不足すると、食事から摂った糖をエネルギーとしてうまく利用できません。そのため、体は代わりに脂肪や筋肉を分解してエネルギー源にするため、たくさん食べていても痩せてしまいます。また尿から糖が漏れ出るため、さらに体重が落ちてしまいます。
このような症状が現れたら、すぐに医療機関に受診する必要があります。(他にも上記の症状が出る病気もあるので、検査で糖尿病かを調べる必要があります)
診断の際には、血液検査で自分の膵臓を攻撃する物質(抗GAD抗体などの自己抗体)がないか調べます。 また、インスリンが体内でどれくらい作られているかを示すCペプチドという値が、著しく低いことも診断の決め手になります。
2型糖尿病:インスリンの効きが悪くなる状態
2型糖尿病は、日本の糖尿病患者さんの9割以上を占める、最も一般的なタイプです。 遺伝的に糖尿病になりやすい体質を持っている人が、生活習慣の乱れが加わることで発症します。
原因は、大きく分けて2つあります。
- インスリン抵抗性 インスリンは分泌されているものの、肥満や運動不足などが原因で、その効き目が悪くなっている状態です。インスリンを「鍵」、体の細胞を「ドア」に例えるなら、鍵はあるのに鍵穴が錆びついてドアが開きにくくなっているイメージです。
- インスリン分泌低下 インスリンの効きが悪い状態が続くと、膵臓はなんとか血糖値を下げようと、より多くのインスリンを作り続けます。その結果、膵臓が疲れ果ててしまい、十分な量のインスリンを分泌できなくなってしまう状態です。
多くの場合、この2つの原因が重なり合って血糖値が上昇します。 2型糖尿病は、初期の軽症の段階では自覚症状がほとんどありません。 そのため、学校や会社の健康診断で血糖値の高さを指摘されて、初めて気づくケースが非常に多いです。
症状がないからと放置してしまうと、気づかないうちに膵臓の機能はどんどん低下していきます。 治療の基本は食事や運動の見直しですが、進行すると飲み薬を使ったり、インスリン注射が必要になったりすることもあります。
※2型糖尿病の病態と注意点をもっと詳しく知りたい方(最後にQ&Aあり)
妊娠糖尿病:妊娠をきっかけに起こる糖代謝異常
妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて発見される、糖の代謝異常のことです。 妊娠すると、お腹の赤ちゃんを育てるために、胎盤からさまざまなホルモンが分泌されます。 このホルモンの一部には、インスリンの働きを邪魔する作用があるのです。
そのため、妊娠中は誰でもインスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)になります。 通常、体はインスリンの分泌量を増やしてこの変化に対応します。 しかし、その対応が追いつかない場合に血糖値が上がり、妊娠糖尿病と診断されます。
もともと家族に糖尿病の人がいる、肥満気味である、といった場合にリスクが高まります。 妊娠中の高血糖は、お母さん自身だけでなく、お腹の赤ちゃんにも影響を及ぼす可能性があります。
- お母さんへの影響 妊娠高血圧症候群や、羊水量の異常などが起こりやすくなります。
- 赤ちゃんへの影響 赤ちゃんが大きくなりすぎる巨大児や、生まれた直後に低血糖を起こすリスクが高まります。
多くの場合、出産して胎盤が体の外に出ると、インスリンの効きは元に戻り、血糖値も正常化します。 しかし、一度でも妊娠糖尿病になった方は、将来的に本格的な2型糖尿病を発症するリスクが高いことがわかっています。 そのため、出産後も定期的な検査を受けることが大切です。
二次性(その他)糖尿病:病気や薬が原因となるタイプ
この分類には、1型、2型、妊娠糖尿病のどれにも当てはまらない、特別な原因によって起こる糖尿病が含まれます。 原因がはっきりしているため、「二次性糖尿病」とも呼ばれます。
- 膵臓や肝臓の病気によるもの 慢性膵炎や膵臓の手術などで、インスリンを作る膵臓の機能自体が損なわれると糖尿病になります(膵性糖尿病)。また、肝硬変など重い肝臓の病気でも、糖の代謝がうまくいかなくなり、糖尿病を発症することがあります(肝性糖尿病)。
- 薬の副作用によるもの(薬剤誘発性糖尿病) 治療で使う薬が原因で血糖値が上がることがあります。代表的なのは、膠原病などの自己免疫の病気の治療で使われるステロイド薬です。ステロイドは、肝臓で糖が作られるのを促し、インスリンの効きを悪くする作用があります。
- ホルモンの異常によるもの 血糖値を上げる作用を持つホルモンが、病気によって過剰に分泌されることで糖尿病になることがあります。例えば、コルチゾールが過剰になる「クッシング症候群」や、成長ホルモンが過剰になる「先端巨大症」などがこれにあたります。
※二次性(その他)糖尿病の病態と注意点をもっと詳しく知りたい方(最後にQ&Aあり)
以下では、それぞれの糖尿病について、さらに詳しく紐解いていきます。
【1型糖尿病】自己免疫によってインスリンが欠乏してしまう状態
1型糖尿病は、生活習慣が原因ではなく、ある日突然、誰にでも起こりうる病気です。
糖尿病全体の約5%と数は少ないですが、決して特別な病気ではありません。
大切なのは、これから自分の体と向き合うために、正しい知識を持つことです。
ここでは1型糖尿病がどのような病気なのかを、糖尿病専門医の視点から詳しく解説します。
主な原因:自己免疫による膵臓β細胞の破壊
1型糖尿病の主な原因は「自己免疫」という体の反応が、誤って作動することです。 私たちの体には、ウイルスや細菌から身を守る「免疫」という防御システムがあります。
しかし、何かのきっかけでこの免疫システムが、自分自身の体の一部を敵と勘違いしてしまうのです。 1型糖尿病では、膵臓(すいぞう)にある「β(ベータ)細胞」が攻撃の対象になります。
β細胞は、血糖値を下げる唯一のホルモン「インスリン」を作る、体にとって不可欠な工場です。 この工場が自己免疫によって破壊されるため、インスリンをほとんど、あるいは全く作れなくなります。 これを「絶対的インスリン欠乏」と呼び、治療にはインスリン注射が欠かせません。
この病気は、食べすぎや運動不足といった生活習慣とは直接関係がありません。 遺伝的な要因も少しは関わりますが、2型糖尿病に比べるとその関連は低いとされます。 つまり、1型糖尿病はあなたのせいでは決してないのです。
- 自己免疫とは 本来体を守るはずの免疫が、自分自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまう状態です。
- 膵臓のβ細胞とは 血糖値を下げる働きを持つ「インスリン」を産生・分泌する細胞です。
- インスリンとは 血液中のブドウ糖を細胞に取り込ませ、エネルギー源として利用させるために不可欠なホルモンです。
発症の仕方で分かれる3つの病型(劇症・急性・緩徐進行)
1型糖尿病は、インスリンを作るβ細胞が破壊される速さによって、大きく3つのタイプ(病型)に分けられます。 進行の仕方が違うため、診断や治療の進め方も少しずつ異なります。
| 病型 | 進行スピード | 特徴 |
|---|---|---|
| 劇症(げきしょう) |
非常に速い (約1週間) |
・症状が出てからわずか数日でインスリンがほぼ出なくなる、最も急激なタイプです。 ・急激に悪化するため、診断時点で命に関わる「糖尿病ケトアシドーシス」に陥っていることが多くあります。 ・発症があまりに急なため、過去1〜2ヶ月の血糖値の平均を反映するHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の値は、血糖値の高さに比べてあまり高くないことがあります。 |
| 急性発症 |
速い (数ヶ月単位) |
・1型糖尿病で最も多い典型的なタイプです。 ・数ヶ月かけてβ細胞が破壊され、インスリンが出なくなります。 ・治療開始後、残っていたβ細胞が一時的に回復し、インスリン注射が少量で済む「ハネムーン期」を迎えることがありますが、この状態は長くは続きません。 |
| 緩徐進行(かんじょしんこう) |
ゆっくり (数年単位) |
・数年から十数年かけてゆっくりとインスリン分泌能力が低下します。 ・発症初期は2型糖尿病と症状が似ているため、間違って診断されることもあります。 ・診断には、自己免疫の存在を示す「自己抗体」を血液検査で調べることが重要になります。 |
代表的な症状とは?:急な喉の渇き、多飲多尿、体重減少
インスリンが作れないと、食事で摂った糖を細胞がエネルギーとして使えません。
その結果、血液中の糖の濃度(血糖値)が異常に高くなり、体に様々なサインが現れます。
これらの症状は、比較的短い期間で急に現れるのが1型糖尿病の特徴です。
・異常に喉が渇き、たくさんの水分を飲む(口渇・多飲)
血液中の糖が増えすぎると、血液がドロドロになります。
体はそれを薄めようとして、脳に「水分が欲しい」と強い指令を出します。
そのため、常に喉が渇いた状態になり、たくさんの水分を飲むようになります。
・尿の回数や量が増える(多尿)
たくさん水分を摂ることに加え、体は血液中の余分な糖を尿として排出しようとします。
このとき、糖と一緒に多くの水分も排出されるため、尿の量や回数が著しく増えます。
・たくさん食べているのに体重が減る(体重減少)
インスリンがないと、食事から摂った糖をエネルギーとして使えません。
体がエネルギー不足に陥り、代わりに体内の脂肪や筋肉を分解してエネルギー源にし始めます。
そのため、食事量は変わらないか、むしろ増えているのに、体重が急激に減少します。
これらのサインを放置すると、非常に危険な状態になることがあります。
脂肪の分解が進むと、「ケトン体」という酸性の物質が血液中に増え、体が酸性に傾きます。
ケトン体がたくさんできると、「糖尿病ケトアシドーシス」という状態になり、吐き気や腹痛、意識がもうろうとします。
このような症状が見られたら、すぐに医療機関を受診する必要があります。
日常生活で大切になるポイントとは?
・インスリン注射と血糖測定のタイミング
食事時間や活動量に合わせて、インスリン注射や血糖測定を行う必要があります。職場や外出先では、周囲の目を気にする必要がない場所を見つけることが大切です。 職場の休憩室や個室、あるいはカフェやレストランの化粧室などを利用し、落ち着いて処置ができる場所を確保しておきましょう。
・食事への対応
職場のランチ、接待、外食など、食事の状況は様々です。 あらかじめ食事の内容や炭水化物の量を把握し、それに合わせてインスリン量を調整します。外食の際は、メニューの栄養成分表示を確認したり、食事前に適量を決めておくなど工夫しましょう。 また、仕事の都合で食事時間が不規則になる場合は、低血糖を避けるため、補食を携帯するなどの対策が必要です。
・運動と低血糖への注意
仕事で体を動かす機会が多い場合や、趣味で運動をする場合は、運動が血糖値を下げる効果があるため、低血糖を起こしやすくなります。 運動の前後に血糖値を測定したり、低血糖に備えてブドウ糖やジュースなどの補食を常に持ち歩くことが重要です。
・低血糖への備えと対応
低血糖の症状(冷や汗、震え、強い空腹感など)と、その時の対処法(ブドウ糖などを摂る)を、家族や職場の上司、同僚にも伝えておくことで、万が一の時に安心して対応できます。 また、ブドウ糖を携帯することを習慣化し、いつでもすぐに摂取できるよう準備しておきましょう。
・周囲の理解を得る
最も大切なことは、1型糖尿病が「不摂生な生活」が原因の病気ではないという正しい理解を広めることです。 病気への偏見をなくし、患者さんが安心して過ごせる環境を作ることが、治療を続ける上で大きな支えになります。 一人で抱え込まず、家族や医師と相談しながら、病気と向き合っていきましょう。
日本では日本IDDMネットワークという、1型糖尿病患者さんに関わる全ての方にお役立て頂けるサイトもあります。是非ご参照下さい。
よくある質問(Q&A)
Q&A(1型糖尿病)
1型糖尿病はなぜ発症するのですか?生活習慣病ですか?
自己免疫の異常により、インスリンを作り出す膵臓の細胞が破壊されることで発症します。そのため生活習慣とは関係がありません。
1型糖尿病はどんな人に多いですか?
子どもや10代、20代の若い世代で突然発症することが多いですが、年を取ってからも発症する方もおられます。
1型糖尿病の主な症状を教えてください。これらの症状が出たらどうすればよいですか?
喉の異常な渇き、尿の回数が増える、急激な体重減少、異常な倦怠感などが代表的な症状です。これらの症状が出たら、糖尿病かどうかの判別がすぐに必要となりますので、可及的速やかに医療機関の受診をお勧め致します。
1型糖尿病の治療法は何ですか?完治しますか?
インスリンを作る細胞が破壊されるため、基本的にはインスリン注射を継続する必要があります(緩徐進行1型糖尿病については、インスリン分泌が保たれていることがあるので事情が異なる場合があります)。詳しくは1型糖尿病の治療についてをご参照ください。
1型糖尿病は遺伝しますか?
遺伝的要素もありますが、必ずしも遺伝するわけではなく、家族歴がなくとも発症することが多いと言われています。
【2型糖尿病】生活習慣と遺伝が関わる最も多いタイプ
日本の糖尿病患者さんのうち、9割以上を占めるのがこの2型糖尿病です。
「生活習慣病」として紹介されることが多いため、自己管理の問題と捉えられがちです。
しかし、2型糖尿病は、食生活や運動習慣といった環境の要因だけではありません。
生まれ持った遺伝的な体質も大きく関係しており、誰にでも起こりうる病気です。
ここでは2型糖尿病がどのような病気なのかを、糖尿病専門医の視点から詳しく解説します。
主な原因:インスリン抵抗性とインスリン分泌低下
2型糖尿病が起こる背景には、主に2つのメカニズムが関わっています。
「インスリン抵抗性」と「インスリン分泌低下」です。
多くの場合、この2つが重なり合って病気が進行していきます。
・インスリン抵抗性
インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞に取り込ませる「鍵」の役割をします。
肥満、特に内臓脂肪が増えると、細胞のドアにある「鍵穴」が錆びついてしまいます。
その結果、インスリンという鍵があってもドアが開きにくくなった状態になります。
これがインスリン抵抗性で、血液中のブドウ糖が細胞に入れず、血糖値が上昇します。
・インスリン分泌低下
インスリンの効きが悪い状態が続くと、膵臓は「もっと鍵を作らなきゃ!」と頑張ります。
しかし、長期間無理をし続けると、インスリン工場である膵臓は疲れ果ててしまいます。
その結果、十分な量のインスリンを作れなくなってしまうのが、インスリン分泌低下です。
かつては、この2つが主な原因と考えられていました。しかし最近の研究では、病気の原因はこれだけではないことが分かってきました。
肝臓、筋肉、脂肪細胞、腎臓、消化管、さらには脳に至るまで、多くの臓器が互いに連携し血糖値を調節していることが明らかになっています。
2型糖尿病は、このチームプレイがうまくいかなくなった、非常に複雑な病気なのです。
発症に関わる遺伝的要因と環境要因
2型糖尿病は、遺伝的な「なりやすさ」と、生活習慣などの「きっかけ」が、パズルのように組み合わさって発症します。
【遺伝的要因】
両親や兄弟姉妹(時に祖父母やおじ・おば)に糖尿病の方がいる場合、そうでない人と比べて発症しやすいことが知られています。
これは病気そのものがうつるのではなく、次のような体質が遺伝しやすいためです。
・インスリンを分泌する力がもともと弱い体質
・インスリンが効きにくくなりやすい体質
特に日本人は、欧米の人々と比べてインスリンを分泌する力が弱い傾向があります。
そのため、それほど太っていなくても糖尿病を発症しやすいといわれています。
【環境要因】
遺伝的な体質に、次のような生活習慣や環境が加わると、発症の引き金となります。
| 要因 | 体への影響 |
|---|---|
| 肥満(特に内臓脂肪) | インスリンの効きを悪くする(インスリン抵抗性)大きな原因になります。 |
| 食べ過ぎ・高カロリー食 | 血糖値を直接上げるだけでなく、膵臓に大きな負担をかけます。 |
| 糖質(加糖飲料、甘味) | 糖質の摂りすぎで血糖値が急上昇します。特に加糖飲料は急激に上昇します。。 |
| 運動不足 | 筋肉でのブドウ糖の利用が減り、インスリン抵抗性を悪化させます。 |
| ストレス | ストレスを感じると、血糖値を上げるホルモン(コルチゾールなど)が分泌されます。 |
| 加齢 | 年齢を重ねると、誰でも膵臓の機能は少しずつ低下していく傾向があります。 |
| その他 | 喫煙や過度な飲酒、睡眠不足なども発症に関わるとされています。 |
初期は気づきにくい?症状と進行した場合のサイン
2型糖尿病は、1型のように急激に症状が出ることはあまりありません。
血糖値がゆっくりと上昇するため、自覚症状がないまま何年も経過することが多いのです。
そのため「サイレント・キラー(静かなる殺し屋)」とも呼ばれます。
会社の健康診断で「血糖値が高い」と指摘され、初めて気づくことが大半です。
しかし、注意深く自分の体を観察すると、初期のサインが見つかることもあります。
【もしかして?初期のサイン・チェックリスト】
☑ なんとなく体がだるい、疲れがとれない
☑ 食事の後に、とても強い眠気におそわれる
☑ 手や足の先が、少しピリピリとしびれる感じがする
☑ 最近、尿が泡立つようになった気がする
【要注意!進行した場合の典型的なサイン】
病気が進み、血糖値がかなり高い状態が続くと、次のようなはっきりした症状が現れます。
☑ 異常に喉が渇き、水分をたくさん飲む(口渇・多飲)
☑ トイレの回数や尿の量が明らかに増えた(多尿)
☑ 食べているのに体重が減ってきた(体重減少)
☑ 目がかすんだり、視力が落ちたりする
☑ 小さなケガや切り傷が治りにくくなった
これらのサインは、体がSOSを出している証拠です。
一つでも当てはまる場合は、放置せずに必ず医療機関を受診してください。
“糖尿病は自己管理が悪いから”という「偏見」との向き合い方
「糖尿病」という言葉には、「だらしない」「自己管理ができない」といった、ネガティブなイメージがつきまといがちです。
診断されたことで、周りからそう見られるのではないかと不安になったり、自分自身を責めたりする人も少なくありません。
しかし、それは大きな誤解です。
これまで説明したように、2型糖尿病の発症には遺伝的な体質が大きく関わっています。生活習慣はあくまで引き金の一つに過ぎません。
同じような生活を送っていても、糖尿病になる人とならない人がいるのです。
あなたが病気になったのは、決してあなただけのせいではありません。
この社会的な偏見と向き合うには、まずあなた自身が病気を正しく知ることが第一歩です。
そして、もし打ち明けられるなら、家族や親友にこう伝えてみてください。
「遺伝も関係していて、誰でもなる可能性がある病気なんだ」と。
無理にすべての人に理解してもらう必要はありません。
最も大切なのは、一人で悩みを抱え込まないことです。
医師や看護師、管理栄養士といった医療スタッフは、あなたの治療を支えるチームです。
自分を責めることなく、これから病気とどう付き合っていくかを一緒に考えていきましょう。もし心配なことがあれば、いつでも我々にご相談ください。
Q&A(2型糖尿病)
2型糖尿病はなぜ発症するのですか?
遺伝的な要因に加えて、糖質の摂取が多すぎることや、肥満・運動不足などの生活習慣の乱れが主な原因とされています。
2型糖尿病の発症のメカニズムはどうなっていますか?
インスリンの効き目が悪くなる「インスリン抵抗性」の出現や、膵臓が疲れてインスリンの分泌する力が低下することが原因で血糖値が上昇します。
2型糖尿病の主な症状は何ですか?
1型糖尿病のような急激な症状は少ないこともあり無症状のこともありますが、血糖値がかなり悪い値が続くと喉の異常な渇き、尿の回数が増える、急激な体重減少、異常な倦怠感などが出てきます。
これらの症状が出たら、糖尿病かどうかの判別がすぐに必要となりますので、可及的速やかに医療機関の受診をお勧め致します。
2型糖尿病の治療法は何ですか?
食事療法、運動療法、また必要に応じて薬物療法(内服薬、注射薬(インスリン、GLP1受容体作動薬、GIP/GLP1受容体作動薬))があります。治療法について詳しくは糖尿病の治療をご参照ください。
2型糖尿病は遺伝しますか?
はい、遺伝的な要素が多いとされています。
【妊娠糖尿病】妊娠中に注意が必要な糖代謝異常
妊娠中に「血糖値が高めですね」と指摘されると、誰でも不安になるものです。
しかし妊娠糖尿病は、妊娠という特別な期間にだけ起こる、一時的な糖の代謝異常です。
お母さん自身や、お腹の赤ちゃんのせいではありません。
体の仕組みを正しく理解し、適切に対処すれば、元気に赤ちゃんを迎えることができます。
ここでは、妊娠糖尿病について糖尿病専門医の視点から詳しく解説します。
主な原因とは?:胎盤から出るホルモンによるインスリン抵抗性の増大
妊娠糖尿病が起こる主な原因は、お腹の赤ちゃんを育てる「胎盤」にあります。
胎盤は、赤ちゃんに栄養や酸素を届ける、妊娠中だけ作られる特別な臓器です。
この胎盤からは、赤ちゃんの成長を促すためのホルモンがたくさん分泌されます。
代表的なものに、ヒト胎盤ラクトゲンやプロゲステロンなどがあります。
これらのホルモンは、赤ちゃんにとって不可欠な応援団のような存在です。
しかし、この応援団には、お母さんのインスリンの効きを悪くする副作用があります。この状態を「インスリン抵抗性」と呼びます。
インスリンは、血液中の糖を細胞に取り込ませるための鍵のようなホルモンです。
インスリン抵抗性とは、その鍵が効きにくくなり、血糖値が上がりやすくなる状態を指します。
実は、妊娠が進むとどんな妊婦さんでも、このインスリン抵抗性は高まります。
通常、体はお母さんの膵臓(すいぞう)がインスリンの分泌量を増やして対応します。
しかし、もともとインスリンを分泌する力がそれほど強くない体質の方だとどうでしょう。
膵臓が頑張っても、需要にインスリンの供給が追いつかなくなってしまいます。
この膵臓の補償が不十分な場合に、血糖値が基準を超え、妊娠糖尿病と診断されるのです。
この現象は、胎盤が大きくなる妊娠後半に起こりやすいのが特徴です。
母体と胎児に及ぼす影響とは?
妊娠中の血糖値が高い状態が続くと、お母さんと赤ちゃんの両方に影響が出ることがあります。
だからこそ、血糖値を適切にコントロールすることが非常に大切なのです。
お母さんの血液と赤ちゃんの血液は、へその緒でつながっています。
お母さんの血液中の余分な糖は、胎盤を通じて赤ちゃんへと直接送られてしまいます。
すると、赤ちゃんの体の中では次のようなことが起こります。
1. お母さんから大量の糖が送られてくる。
2. 赤ちゃんの膵臓が、この糖を処理するためにインスリンをたくさん分泌する。
3. インスリンには脂肪を蓄え、体を大きくする作用もあるため、赤ちゃんが過剰に成長する。
その結果、赤ちゃんが標準よりかなり大きくなる「巨大児」になる可能性があります。
巨大児になると、お産の時に産道に引っかかってしまい、帝王切開が必要になることがあります。
また、生まれた瞬間に、お母さんからの糖の供給が突然止まります。
すると、赤ちゃんは自分のインスリンが効きすぎて、危険な低血糖を起こすこともあります。
お母さん自身にも、様々な合併症のリスクが高まることが知られています。
| 対象 | 主な影響 |
|---|---|
| お母さん | ・妊娠高血圧症候群(血圧の上昇や蛋白尿) ・羊水過多症(羊水が異常に増える) ・肩甲難産(赤ちゃんの肩が産道に引っかかる) ・帝王切開になる確率の上昇 |
| 赤ちゃん | ・巨大児 ・出生直後の低血糖や呼吸障害 ・心肥大(心臓が大きくなる) ・強い黄疸が出やすい |
これらのリスクを避けるため、自己血糖測定による血糖値の把握、食事療法、場合によってはインスリン治療を行います。
適切な管理で、お母さんと赤ちゃんの両方の健康を守ることが治療の目標です。
出産後の回復と将来の2型糖尿病発症リスク
妊娠糖尿病と診断されると、将来のことを心配されるかもしれません。
しかし、多くの場合、原因となっていた胎盤が体の外に出る「出産」を終えると、インスリンの効きは元に戻り、血糖値も正常化します。
ただし、ここで安心してはいけません。
妊娠糖尿病は「あなたの体は、将来2型糖尿病になりやすい体質ですよ」という、体からの大切なメッセージなのです。
妊娠という、体に大きな負荷がかかる「ストレステスト」を行った結果、血糖値をコントロールする力の弱点が明らかになった、と考えることができます。
実際に、アメリカ糖尿病学会の報告でも、妊娠糖尿病を経験した方は、そうでない方と比べて、将来2型糖尿病を発症するリスクが著しく高い(およそ10倍)ことが指摘されています。
つまり、出産はゴールではなく、ご自身の健康な未来を守るための新しいスタートなのです。
出産後から心がけたい!生活習慣
・定期的な検査
出産後も年に1回は健康診断などで血糖値、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)をチェックし、自分の体の状態を把握しましょう。
・バランスの良い食事
野菜や食物繊維を積極的に摂り、糖質や脂質の多い食事は控えめにすることが大切です。
・適度な運動の習慣化
ウォーキングなどの有酸素運動は、インスリンの効きを良くする効果が期待できます。
・適正体重の維持
肥満、特に内臓脂肪は2型糖尿病の大きなリスク因子です。適切な体重を保つよう心がけましょう。
妊娠糖尿病になったことをきっかけに、生活習慣を見直すこと。
それが、ご自身と、そして大切な家族の未来の健康を守ることに直接つながります。
Q&A(妊娠糖尿病)
妊娠糖尿病は何ですか?
妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見された、または妊娠中にはじめて発症した糖の代謝の異常のことです。妊娠期間中だけの特別な状態であり、適切に管理すれば多くは出産後に血糖値が正常に戻ります。
妊娠糖尿病になる原因は何ですか?
主な原因は、胎盤から分泌されるホルモンが、お母さんのインスリンの働きを妨げる「インスリン抵抗性」を高めることです。通常、膵臓がインスリンの分泌量を増やして対応しますが、その力が追いつかない場合に発症します。
妊娠糖尿病と診断されましたが、赤ちゃんに影響はありますか?
血糖値が高い状態が続くと、お母さんの血液中の余分な糖が胎盤を通じて赤ちゃんに送られてしまいます。これにより、赤ちゃんが通常より大きくなる「巨大児」になるリスクや、生まれた直後に低血糖や呼吸障害を起こすリスクが高まります。
妊娠糖尿病は出産後も続くのですか?
ほとんどの場合、出産後は原因であった胎盤が体外に出るため、インスリンの効きが元に戻り、血糖値も正常化します。ただし、将来的に2型糖尿病を発症するリスクが高まるので注意が必要です。
妊娠糖尿病の治療は?
食事療法、自己血糖測定による血糖値の把握、また必要に応じてインスリン治療を行います。詳しくは妊娠糖尿病の治療についてをご参照ください。
【二次性(その他)糖尿病】特定の病気や薬が原因となる場合
「糖尿病」と聞くと、多くの人が生活習慣が原因の2型糖尿病を思い浮かべるかもしれません。
しかし、他の病気や、使っている薬の副作用が原因で血糖値が高くなる糖尿病も存在します。
これらは原因がはっきりしているため「その他の特定の機序による糖尿病」、あるいは「二次性糖尿病」と呼ばれます。
もとの病気の治療が最優先ですが、同時に血糖値をしっかり管理することも非常に大切です。
ここでは、その代表的なケースについて、糖尿病専門医が詳しく解説します。
膵性糖尿病
膵臓の病気(慢性膵炎や膵臓がん、膵臓の切除手術後など)が原因で発症する糖尿病です。
膵臓は、血糖値を下げる「インスリン」を作るだけでなく、実は血糖値を上げる「グルカゴン」というホルモンも作っています。
膵臓の病気では、インスリンとグルカゴンの両方の分泌が減ってしまうことが大きな特徴です。
車に例えるなら、血糖値を下げる「ブレーキ」と上げる「アクセル」の両方が効きにくくなる状態です。
そのため、血糖値の変動が非常に激しくなり、高血糖だけでなく、急に低血糖に陥る危険性もあります。
食事から摂った栄養の消化を助ける「消化酵素」の分泌も悪くなるため、栄養状態にも注意が必要です。
このように複雑な状態のため、きめ細やかな血糖管理が求められます。
肝性糖尿病
肝硬変やウイルス性肝炎(特にC型肝炎)、脂肪肝といった肝臓の病気が原因となります。
肝臓は、食事で摂った糖を「グリコーゲン」という形で貯蔵し、必要な時に放出する「糖の貯蔵庫」です。
まさに、体全体の血糖値を調節する司令塔のような役割を担っています。
肝臓の機能が低下すると、この血糖調節システムがうまく働かなくなります。
その結果、インスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)になり、血糖値が上がってしまうのです。
特にC型肝炎ウイルスは、インスリン抵抗性を引き起こしやすいことが研究で報告されています。
ステロイド糖尿病:副腎皮質ステロイド薬の副作用
膠原病等の自己免疫の病気など、さまざまな病気の治療で広く使われる副腎皮質ステロイド薬(プレドニゾロンなど)という種類の薬が原因です。
ステロイド薬は、体の炎症を強力に抑える非常に有効な薬です。 しかしその一方で、血糖値を上げてしまう作用も持っています。 その仕組みは、主に次の2つです。
・肝臓での糖新生の促進
肝臓で、アミノ酸などから新しく糖が作られる働きを活発にします。
・インスリン抵抗性の引き起こし
筋肉などの細胞で、インスリンが効きにくい状態を作り出します。
これらの作用により、特に食事をした後の血糖値が著しく高くなりやすいのが大きな特徴です。 発症は薬の量や使用期間と関連しますが、何より大切なのは、もとの病気の治療です。 自己判断で薬の量を減らしたり中止したりすることは、もとの病気を悪化させる危険があるため、絶対にしてはいけません。 主治医の指示のもと、食事や運動、場合によっては飲み薬やインスリン注射で血糖を管理しながら、もとの病気の治療を続けます。
その他の薬剤誘発性糖尿病(免疫チェックポイント阻害薬など)
ステロイド薬以外にも、糖尿病を引き起こす可能性のある薬はいくつかあります。 治療中の病気があり、急に高血糖を指摘された場合は、服用中のお薬が影響している可能性も考えられます。
代表的な薬には、次のようなものがあります。
・免疫チェックポイント阻害薬
がんの治療で使われる新しいタイプの薬です。この薬は、がん細胞が免疫にかけているブレーキを外して、体が本来持つ力でがんを攻撃させます。しかしその過程で、免疫が誤ってインスリンを作る膵臓のβ細胞を攻撃してしまうことがあります。その結果、急激にインスリンが作れなくなる「劇症1型糖尿病」に似た状態を引き起こすことがあります。
・抗精神病薬
統合失調症などの治療で使われる薬(オランザピンなど)の一部には、血糖値を上げやすいものがあります。インスリンの効きを悪くする作用や、食欲を増進させて体重増加を招くことが原因です。
・免疫抑制剤
臓器移植の後に、拒絶反応を抑えるために使われる薬(タクロリムスなど)です。膵臓に直接作用して、インスリンの分泌を抑える働きがあるため、高血糖の原因となることがあります。
これらの薬は、いずれも病気の治療に欠かせません。 服用中に喉の渇きや多飲多尿といった症状が現れた場合は、すぐに主治医や薬剤師に相談してください。
内分泌疾患による糖尿病
私たちの体の中では、インスリン以外にもさまざまな「ホルモン」が血糖値の調節に関わっています。 特定のホルモンが過剰に分泌される病気(内分泌疾患)によって、血糖値が上がってしまうことがあります。
| 病名 | 原因となるホルモン | 主なメカニズム |
|---|---|---|
| クッシング症候群 | コルチゾール |
・肝臓で糖がたくさん作られる ・インスリンの効きが悪くなる |
| 先端巨大症 | 成長ホルモン | ・インスリンの働きを直接邪魔する |
| 褐色細胞腫 | カテコラミン(アドレナリンなど) |
・インスリンが分泌されにくくなる ・肝臓から糖がどんどん放出される |
クッシング症候群
副腎から分泌される「コルチゾール」というホルモンが過剰になる病気です。 コルチゾールはステロイドホルモンの一種で、血糖を上げる強い作用を持っています。 顔が満月のように丸くなる、お腹周りに脂肪がつくといった特徴的な見た目の変化とともに、高血糖が引き起こされます。
先端巨大症(アクロメガリー)
脳の下垂体という部分から「成長ホルモン」が過剰に分泌される病気です。 成長ホルモンは、インスリンの働きを邪魔する作用(インスリン拮抗作用)を持つ代表的なホルモンです。 そのため、手足が大きくなる、あごが突き出るといった症状とともに、糖尿病を発症しやすくなります。
褐色細胞腫
副腎から「カテコラミン(アドレナリンなど)」というホルモンが過剰に分泌される病気です。 アドレナリンは、興奮した時に出るホルモンとして知られていますが、これが常に過剰な状態になります。 その結果、インスリンの分泌が抑えられ、肝臓からの糖の放出が増えるため、高血圧とともに高血糖が起こります。
これらの病気の場合は、原因となっているホルモン異常を治療することが、血糖コントロールの根本的な解決につながります。
Q&A(二次性(その他)糖尿病)
二次性(その他)糖尿病にはどんなものがありますか?
膵臓の病気によるもの(膵性糖尿病)、肝臓の病気によるもの(肝性糖尿病)、薬の副作用によるもの(ステロイド糖尿病を始めとした薬剤誘発性糖尿病)、ホルモン異常によるもの(内分泌疾患による糖尿病)があります。
膵臓の病気と糖尿病には関係がありますか?
はい、あります。膵炎や膵臓がん、膵臓の切除手術などが原因で発症する糖尿病を「膵性糖尿病」と呼びます。インスリンを分泌する力が減ってしまい、血糖値が上がります。
肝臓の病気と糖尿病には関係がありますか?
はい、あります。肝硬変などの慢性的な肝臓の病気で発症する糖尿病を「肝性糖尿病」といいます。主にインスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)を引き起こし、血糖値が上がります。
ステロイドを内服すると糖尿病になりますか?
全員がなるわけではありませんが、血糖が上がりすぎて糖尿病になる可能性があります。これを「ステロイド糖尿病」と言います。ただしステロイドは自己判断では絶対に中止せず、主治医とよく相談するようにしてください。
がんの治療薬で糖尿病になることがあるのですか?
がん治療に使う免疫チェックポイント阻害薬という薬は、まれに免疫の働きが膵臓に及び、インスリンを作る細胞を攻撃してしまうことがあります。これにより、急激にインスリンが作れなくなる「劇症1型糖尿病」のような状態を引き起こすことがあります。
服用している薬で糖尿病になることがあるのですか?
はい、あります。ステロイドが有名ですが、他にも一部の抗精神病薬や免疫抑制剤なども血糖値を上げる可能性があります。喉の渇きや多尿といった症状が現れた場合は、すぐに医師や薬剤師に相談してください。
ホルモンの病気で糖尿病になることがあるのですか?
はい、あります。特定のホルモンが過剰に分泌される内分泌疾患によっても、糖尿病になることがあります。例えば、クッシング症候群や先端巨大症、褐色細胞腫などが挙げられます。
二次性(その他)糖尿病の治療は、何が重要ですか?
何によって血糖値が上がっているかによって、治療が変わってきます。食事療法や運動療法で十分なこともあれば、内服薬やインスリンを使用することもあります。
まとめ
| タイプ | 主因 | 初発の傾向 | 診断の要点 | 治療 | 緊急度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1型 | 自己免疫 | 小児〜若年(成人も) | 自己抗体・Cペプチド枯渇 | インスリン必須 | 症状急速時は当日受診 |
| 2型 | 遺伝素因×生活習慣 | 中高年中心 | 空腹時血糖/OGTT/HbA1c | 食事運動+薬物療法 | 合併症リスク管理 |
| 妊娠 | 胎盤ホルモン | 妊娠中 | 妊娠期スクリーニング | 食事療法中心(必要時インスリン) | 母児リスクに留意 |
| 二次性(その他) | 他疾患・薬剤・ホルモン | 病態依存 | 原因疾患/薬歴の確認 | 原因治療+血糖管理 | 原因により変動 |
今回は、糖尿病の様々な種類について詳しくご紹介しました。
「糖尿病は生活習慣のせい」と一括りにされがちですが、実際には生活習慣だけでなく、遺伝や自己免疫、妊娠、他の病気や薬の影響など、その原因は多岐にわたります。
大切なのは、「糖尿病=自己管理が悪い」というイメージにとらわれず、まずは自分の体の状態を正しく知ることです。どのタイプであれ、あなただけが悪いわけでは決してありません。
少しでも気になる症状があったり、診断されて不安を感じていたりするなら、一人で抱え込まずに、ぜひ横浜市鶴見区の渡辺医院までご相談下さい。糖尿病専門医である副院長と一緒に、あなたに合った治療法や向き合い方を見つけていきましょう。
参考文献
本記事は監修医師が執筆し、日本糖尿病学会ガイドラインおよび国際的なレビュー論文を参照しています。
1. Atkinson MA, Eisenbarth GS, Michels AW. Type 1 diabetes. Lancet. 2014;383(9911):69-
2. American Diabetes Association. Classification and Diagnosis of Diabetes: Standards of Medical Care in Diabetes—2024. Diabetes Care. 2024;47(Suppl 1):S18–S36.
3. DeFronzo RA. From the Triumvirate to the Ominous Octet: A New Paradigm for the Treatment of Type 2 Diabetes Mellitus. Diabetes. 2009;58(4):773-795.
4. Kahn SE. The Relative Contributions of Insulin Resistance and β-Cell Dysfunction to the Pathophysiology of Type 2 Diabetes. Diabetologia. 2003;46(1):3–19.
5. Buchanan TA, Xiang AH. Gestational Diabetes Mellitus. J Clin Invest. 2005;115(3):485-491.
6. 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病診療ガイドライン 南江堂 2024.
7. Ewald N, Hardt PD. Diagnosis and Treatment of Diabetes Mellitus in Chronic Pancreatitis.World J Gastroenterol.2013;19(42):7276–7281.
8. Newell-Price J, Bertagna X, Grossman AB, Nieman LK. Cushing’s Syndrome.Lancet.2006;367(9522):1605–1617.
監修医師
渡辺医院 副院長
渡辺 雄祐(Yusuke Watanabe)
日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 糖尿病専門医
横浜市鶴見区出身。慶應義塾大学医学部卒業後、東京都済生会中央病院・慶應義塾大学病院・川崎市立川崎病院で内科、糖尿病診療の経験を積む。現在は生まれ育った横浜市鶴見区の渡辺医院で地元に密着した医療を提供するべく、糖尿病・高血圧症・脂質異常症・肥満症などの生活習慣病や、甲状腺疾患・一般内科を中心に幅広く診療。患者さん一人ひとりに丁寧に向き合う医療を心がけている。
最終更新日:2025年8月17日
